「仕方ない」は丁寧な言い方? 敬語で他の言い方はある?
なんとなく手紙やメールを書いていて、「これって無礼な言い方かな? 失礼かな?」と不安になることってありませんか?
ふだん何気なく使っている言葉でも、受け取る側にとって「ん?」と違和感を感じることがあります。
気づかずにそのような言葉を使ってしまっていると、人間関係にちょっとした溝ができてしまうことも…。
そんなことにならないように、「伝え方」「ことば」は自分本位ではなく伝える相手のことを想って使っていきたいものですよね。
さて、今回はちょっと手紙の時に迷いやすい「仕方ない」という言葉について書いていきたいと思います。
「仕方ない」は無礼・失礼と感じる方もいるので注意が必要
「仕方ない」は丁寧な言い方とは言えません。
相手との関係性にもよりますが、場合によっては無礼・失礼と取られてしまうこともあるでしょう。
友人同士の会話であればそれほど気にすることはありませんが、それほど親しくない相手やお仕事でのお付き合いの方に向けて発する時には少し気を付けたいことばです。
「あれ…? 仕方ない? って敬語でなんて言うんだっけ…」
「しょうがない?」←よけいに無礼になってる?(-_-;)💦
「仕方ない」を敢えて丁寧に言うなら…「致し方ない」「致し方ありません」。。。???
「仕方ない」の丁寧な言い方に注意! 丁寧語・謙譲語・尊敬語
確かに「致し方ない」という言い方は「仕方ない」を丁寧にした言い方ではありますが。
ですが、この言い方にも大変注意が必要です。
なぜかというと、理由は3つあります。
一つ目は、「致し方ない」単体では敬語にならないから。
「致し方ありません」「致し方ございません」というようにして初めて丁寧な言い方になるからです。
また、動作の前置きや前提として「致し方なく~する」というような使い方ができます。
二つ目は、敬語の種類の問題です。
「致し方ない」という言葉は自分の行いや考えに対してへりくだる言い方(=謙譲語)に当たるため、相手の行いや行為に対して使うのは失礼だからです。
特に目上の方に使うのは絶対にやめましょう。
敬語には3つの種類があります。丁寧語、尊敬語、謙譲語の3種類です。
丁寧語…「です」「ます」「ございます」などの表現を使って言葉に丁寧なニュアンスを添える言い方。
謙譲語…自分の動作をへりくだることで相手を持ち上げる言い方です。
尊敬語…実際に動作を行う方の行いを敬う言い方。「言う」という言葉を例に取ると「言われる」という形が尊敬語です。少し例がわかりづらくこの場合は受身形と形が同じになってしまうのですが「勉強する」の場合は「勉強される」という言い方になります。
3つ目は、
目上の方がしたことに対して「仕方ない」「どうしようもない」と評価をする、ジャッジするような行為そのものがあまり好ましくないからです。
上司や取引先の相手やその他相手に敬意を表したい人がいたとします。
彼がなにかのできごとに対してなすすべがなく、キャンセルせざるを得なかった、というできごとを例に取るとしましょう。
この出来事を第三者に伝える場合「〇〇さんは致し方なくキャンセルされた」というのは〇〇さんに対して失礼に当たります。
また、この出来事に対して本人にフォローのつもりで声をかけるにしても「致し方ないことですよ」といういい方はフォローになりません。
この場合第三者に言う時に適切と思われるのは、
「〇〇さんはやむをえなくキャンセルされました。」
「〇〇さんは最善を尽くされたのですが他になすすべがなくキャンセルされました」
などのような言い方です。
ご本人へのフォローは似たような意味の類語を使って表現するとよいでしょう。
たとえば
・「やむをえないことと思います」
・「異存はございません」
・「お気になさらないでください」
このあたりが意味が近く、かつ柔らかい印象になるのではないでしょうか。
前後の文脈や言い表したい気持ちの真相・相手に伝えたいことによって他の言い方はいろいろ考えられる
このように、「仕方ない」の敬語は「致し方ない」だよ!
とだけシンプルに暗記していると、「仕方ない」と言うときよりもかえって失礼なことになってしまいます。
ことばは生き物です。
〇〇=▼▼と単に記号や公式のように当てはめるのではなく、状況や相手の気持ちを想って使うことを心がけましょう。